Henry Kloss(ヘンリー・クロス) 1952年、マサチューセッツ工科大学在学中に、師のエドガー・ウィルシャーとアコースティック・リサーチを設立。 革新的な構造によって低音を再生するエアサスペンション・スピーカーを開発し、ステレオの普及のためにスピーカーの小型化が求められた時代に絶大な反響を呼びました。 特にスピーカーAR3は人気モデルとなり、当時の日本のオーディオメーカーの製品開発の手本になったといいます。 1957年にはKLH社を設立して、 10万台以上が販売されたモデル8スピーカーのほか、高感度小型FMラジオなどを発表。 1968年にはレイ・ドルビーと共同でテープ録音時のヒスノイズを低減するドルビーB方式を開発し、 この方式を組み込んだオープンリール型録音機を完成。1967年、アドヴェント・コーポレーションを設立し、数々のオーディオ製品の名作を発表。1973年にはリアプロジェクション式のテレビを開発し、 1977年にプロジェクション式テレビ専門のクロスビデオ・コーポレーションを設立。 さらに1988年、ケンブリッジ・サウンドワークスをトム・デヴェストと共同で設立して、 コンピュータ用スピーカーなどがベストセラーに。
その後、一時はオーディオ開発の現場を離れたものの、2000年のTivoli Audio 設立に際して初代機種Model One を開発しました。そして2002年に他界するまで、同社の代表的なモデルを次々に手がけます。 クロスは、その生涯を通じてユーザーの立場からオーディオを考え、機能性にすぐれ、 長く使える、リーズナブルな製品を追求し続けました。彼の功績は広く認められており、2000年に全米家電協会(CEA)は「オーディオの殿堂」の50人の1人としてクロスを選んでいます。 またイギリス随一のオーディオ専門誌「ハイファイ・ニューズ」は、2006年の創刊50周年記念号で、オーディオ界の功労者50名の第4位に彼の名を挙げました。